ロコガイド テックブログ

「地域のくらしを、かしこく、たのしく」する、株式会社ロコガイドの社員がいろいろな記事を書いています。

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Notionでの自己管理術

クトゥルフ神話TRPGをやりたいなと思っている伊藤です。

みなさんはタスクを管理したり、それに付随する情報の収集・整理などをするときどのようにしていますか? 最近私はNotionを使ってあらゆる情報をまとめて管理するようにしています。 これまでの経緯、なぜNotionを選択したのか、Notionでどのように管理しているのかについてご紹介したいと思います。

経緯

まず、私の根本的な考え方を説明しなければ何のこっちゃとなりそうなので次の概略図を見てください。

タスクとInput/Outputの関係

タスクが発生した理由や根拠をInputとして、成果物(中間成果物を含む)をOutputとしています。 また、Output → Inputとしているのは、成果物そのものを利用して何か処理することがあるからです。 例えばデザインを興してそれを元にプログラムを書くと言った具合です。

ここでプロジェクトの場合はどうか?のように少しコンテキストを広げて当てはめてみます。

プロジェクトが発生した理由や根拠をInputとして、成果物をOutputとしています。 なんとなく、成立していると思います。

ここまでのパターンを整理して、説明を加えるとここうなります。

Want/Input/Outputの関係

  • Want : アクション・タスク・プロジェクト・目標・目的・願望となるようなもの
  • Input : 入力情報
  • Output : 出力情報

ここまでで言えることはやりたいこと・やるべきことと情報は密接に関係しているということです。

更に重要な点を上げると、これらは個人的な活動と組織的な活動をまたいでいるということです。 (個人で勉強したことを会社での仕事に活用・つなげるのは不思議なことは何もないですよね)


さて、ここで問題になってくるのはタスクを管理するサービス・アプリケーションと情報を管理するサービス・アプリケーションは、それぞれ単体で動作している(ことが多い)ということです。

例えば以下の表のようなことが起こります(あくまで例ですので各サービスに問題があるということではありません)。

コンテキスト タスク管理 メモ・ノートツール
個人 Things Growi
会社 Backlog esa

この例で課題になるのは、互いのサービスの情報を相互に参照しづらい、または参照できないことです。 これは、提示した組み合わせに限らずよく出てくる問題です。 なんだったら同じ会社の内でも、プロジェクトやチーム毎に利用しているサービスが異なる場合もあります。

このように分散した情報を上手に生かすのは、やや骨が折れます。 それぞれの情報を統一する、または参照しやすい状態にすること→構造化が求められるわけです。 しかし、これまで利用してきたサービスでは構造化するのは非常に困難でした…。

なぜNotionなのか

ひとことで言うと「データベースとビューという機能がある」からです。 Notionは、「メモ、タスク、Wikiすべてをひとつにする」という考えを基に作られていて、自分の考えていた課題にもマッチしそうだと感じていました。

基本機能

Notionの基本的な要素に触れておきましょう。

  • ページ : 単体で成り立つ情報郡。タイトルと複数のブロックを持つ
  • ブロック : テキスト、リンク、画像などの1つ1つの要素。CSSのブロックとインラインブロックのような振舞いができる
    • ページをブロック・インラインブロックとしてサブページとして作成することが可能(階層化)

ページとブロック
ページの階層化

データベースとビュー

Notionにはデータベースという概念があります。データベースはRDBMSのテーブルのようなものです。 データベースはページのコレクションを扱います。また、プロパティとしてページのメタ情報を持たせることができます。 プロパティには、テキスト・数値・選択・複数選択・ステータス・日付・リレーション・ロールアップ・関数など様々な種類が用意されています。 そして、ビューという概念でデータベースのページ一覧をどのように表示するか?を設定することができます。

データベース
タイムラインビュー

これらの機能を駆使することで、高度な管理フローでも耐えうると感じられたのでNotionを選択してみました。

情報整理の考え方

個人のナレッジを管理することをPKM(Personal Knowledge Management)と言ったりします。 (PKMで調べてもそれらしい情報はなかなか見付けられないのですが…) 今回はNotion界隈でも有名なPKMを2つ紹介します。

セカンドブレイン

PKMで良さそうだなと最初に感じたのはセカンドブレインという考え方です。 しかし、セカンドブレインの考え方はややマッチしないな、難しいなという部分があったので今回は選択しませんでした。 一応どういうものか噛み砕いて参考程度に紹介しておきます。 考案者のツイートも参考になるかと思います。 https://twitter.com/fortelabs/status/1174071905311047680

セカンドブレインでは次の3つ話がでてきます。

  • BASB : Build a Second Brain
  • PARA : Project, Area, Resource, Archive
  • CODE : Capture, Organize, Distill, Express

BASB

セカンドブレインを構築する話全般を指したものだと考えています。 セカンドブレインとは、デジタル空間に第2の脳を構築し活用しましょうという試みです。

PARA

ナレッジを蓄える場所です。情報を4つにカテゴライズして管理します。 タスク管理で有名なGTD(Getting Things Done)と考え方は似ています。

  • Project: 目標や期限があるもの
  • Area: 長期的に維持されるべき基準を持つもの
  • Resource: 関心のあるトピック・テーマ
  • Archive: 上記以外

PARAメソッドとも呼ばれています。

CODE

  • Capture: 情報を集め、特定の場所に保存していく
  • Organize: 実用性を高める為の作業、整理
  • Distill: 情報郡から本質を見極める、蒸留
  • Express: 蒸留したものをまとめ、アウトプットとして記録、発表する

基本的な考え方はとてもすばらしいというのが感想なんですが、PARAの各要素のスキーマを揃えるか、データベースを統合しなければNotionでは扱いづらいなと感じました。 「Notionでは」なので、例えばディレクトリ・ファイルの整理には活用しています。

Google DriveでのPARA (GoogleDriveをあまり使っていないので数は少ないです)

Google DriveでのPARA

PPV

PPVはAugust Bradley氏の考案したPKMです。 詳しく知りたい方は https://www.yearzero.io/notion-life-design こちらも参照してみてください。

PPVはPillar, Pipeline, Vaultの略です。 PPVでは人生・生活というかなり幅広いスコープでナレッジを扱うことができます。 もちろん「ビジネス」などスコープを絞って活用することもできます。

PPVはLife OSという、そこそこ大きなシステムを構築する必要があります。

  • システム思考で考えること
  • システムとシステムを組合せることが重要

とAugust Bradley氏が発言されていたと記憶しているのですが(ソースは不明)、

システムとシステムを組合せることが重要

は、全体を構築しなくても各々のシステムが動作するのであれば問題なく動作するということです。 つまり、PPVは全体を構築しなくても必要な分だけ構築しても扱えそうだということです。

今回はこのPPVという考え方を選択してみたので、更に深掘りしてみようと思います。

システム思考

システム思考は学校で学ぶようなアプローチではないので補足しておきます。 システム思考は、全てのシステムはより大きなシステムの一部であり、大きなシステムにおけるその機能によって定義されるという視点で考えます。 何を言っているのか分からないので例を上げて考えてみましょう。

例えば、自動車について考えてみます。普段なら分析的思考で考えることが多いでしょう。 「自動車はエンジン、タイヤ、ドア、シートなどで構成されている。」

システム思考では、自動車を交通機関・手段、あるいは運送システムの一つとして捉えることができます。 交通機関と捉えると自動車以外に、バス・電車・飛行機など様々な手段が考えられます。 また、システム思考で重要なのは、各々のシステムが機能することよりも「全体がどう機能するか?」という観点にあります。 例えば、普段バスと地下鉄で通勤しているとすると、バスが運休してしまっても地下鉄が運休してしまっても、通勤する交通機関(システム)として成り立たなくなります。 もしタクシーが拾えるのであれば、一部のシステムが停止しても機能すると言えるかもしれません。

つまるところ、システム思考は、世界を軌道を周回し、時間とともに相互作用する一連の相互接続されたエコシステムとして見ています。 この様に世界を捉えることで、洞察を広げることができます。

最初の経緯で考えていたタスクやプロジェクトも、それぞれがどういう要素で成り立つか(分析的思考)よりも、システム思考で考えていた結果の1つと言えそうです。

PPVについて

前述した通り、PPVでは人生・生活というスコープで情報を扱います。 なぜこのような大きなスコープなのかと言いますと、どの情報がどういう場面で活用できるかは分からないからです。 あらゆるナレッジは関係なさそうなところでも活用できることがあるということですね。

PPVの考え方はNotionでなくても扱えるようですが、Notionで実施すると効率が良いです。

PPVではダッシュボードとなる要素をいくつか用意して運用します。

コマンドセンター

コマンドセンターはPPVにおけるエントリーポイントです。 あらゆる操作をコマンドセンターを起点に行なえるようになっています。

オリジリナルに近いのがv1で、自分なりにカスタムしたものがv2です。 v2では、すべてのデータベースをデータベースで管理していおり、ビューで完結させている他に大きな違いはありません。 私の場合は、別途仕事用にもコマンドセンターを準備しています。

v1 コマンドセンター
v2 コマンドセンター
ロコガイド(自分用) コマンドセンター

普段は「焦点 & 調整」のアクションゾーンや調整ゾーンで詳細な管理をしています。 「成長」、「ビジネス」、「家庭・人生」の部分はPillarと呼ばれるもので、コンテキストに応じた管理ダッシュボードを提供するように組んでいます。

Pillar(柱)

Pillarとは、人生の柱・礎となるような要素を大まかにカテゴライズしたものです。 大カテゴリとして、「成長」、「ビジネス」、「家庭・人生」を設けていますが、このカテゴリは人によって異なるかもしれません。 多趣味なので趣味のカテゴリも用意しようかと思ったのですが、今は個人管理の柱の中に集約しています。

柱の例

私の場合は、柱はそのコンテキストでのダッシュボードとして取り扱っています。 後述で出てくるパイプラインや保管庫とのリレーションを持ち、各要素とどういう関係があるのかが分かるようにプロパティを設定し、柱毎にビューを組合せています。

個人管理
プロダクト管理

サポート

柱をサポートするものを設けています。 毎週何曜日には読書の時間を設けたり、健康の為にランニングをしたり、無駄を無くす為のマインドセットを設けたりという感じです。 運用していく中で、そこそこに重要な要素となるんですが、これにあまりにも縛られると窮屈で逆効果になってしまうので、最近はゆるめに運用しています。

Pipeline(パイプライン)

本記事で最初に取り上げたタスクやプロジェクト、やりたいこと・やるべきことといったレイヤーを管理します。

私の場合は、以下の4つに分けて管理しています。

  • アクションアイテム
  • プロジェクト
  • 目標
  • 目的

それぞれ、考え方のベクトルや粒度は違うものの、やりたいこと・やるべきことを集約しています。 やりたいことの粒度は アクションアイテム < プロジェクト < 目標 <= 目的 のようになっています。

また、それぞれに対してノートやメディアなどの後述する「Vault」と、これもまた後述する「サイクルレビュー」、そして「Pillar」を紐付けています。

パイプライン

アクションアイテム

いわゆるタスクのようなものです。 個別のアクションアイテムには期限のようなものは設定しません。 ビジネス目線では期限は重要なファクターになり得ますが、個人管理ではそこまで重要にならないことが多い為です。 大体いつぐらいまでに完了されるかを、プロジェクト側で管理しています。

プロジェクト

アクションアイテムをどのように処理するのか?を計画する為のレイヤーと言っても過言ではないでしょう。 プロジェクトには0個以上の目標を設定しています。 このプロジェクトが達成されると、どの目標を達成することに近づけるのか?というイメージです。

目標と目的

これらは1つにまとめようか悩んだのですが、今は目標、目的と分けて運用しています(名前が妥当かはやや疑問ですが…)。 どちらにも、なぜそれを達成したいのか?(価値) どうやって達成するのか?(方法)を明記するようにしています。

Vault(保管庫)

Vaultは保管庫です。あらゆる情報を各保管庫に保存していきます。 Notionの公式のブラウザ拡張でWebページをキャプチャし取り込んだり、ノートやアイディアを書いたり、各保管庫と連携してナレッジを蓄積したりしています。 ただ貯めるだけではうまく活用できない事も多いので、セカンドブレインのCODEのサイクルを適用して保管庫に貯めた情報を蒸留し、経験した以外の場面でも活用できるようにまとるようにしています。

保管庫

サイクルレビュー

サイクルレビューでは日々の成果や失敗を観測しまとめ、次の目標・目的を設定する為のレビューを行ないます。 レビューの単位は、

  • daily
  • weekly
  • monthly
  • quarter
  • yearly

の5つで、それぞれテンプレートを用意して運用しています。 (Notionのデータベースにはテンプレート機能があり、用意したテンプレートからページを作成することができます。)

デイリー
クォーター

ここまでが、PPVのコアまたはPPVをサポートするデータベース郡になります。

アクションゾーン

アクションゾーンではアクションアイテムの調整を行ないます。必要に応じてプロジェクトも調整します。

アクションゾーン

アクションアイテムには期限を持たせないという話をしましたが、その代わりにステータスにファジーな予定を持たせています。

  • アクティブ
  • 完了
  • 次にやる
  • いつかやる
  • ...

少しGTDにも似た考え方かもしれません。 フィルタ機能でステータスを大まかに絞ったビューを用意して状態を管理しています。 アクティブなアクションや、次にやるアクションがなくなれば、待ち状態のアクションを次のアクションへ移動する、と言った具合に調整します。

アクションの調整

調整ゾーン

調整ゾーンでは保管庫以外の各要素の調和をはかります。

  • 柱の調整
    • 柱となる要素が適切か、増えやしたり減らす必要はないか
  • 目標・価値などを理解・整理する
  • 達成する為の方法を具体化
  • 実行計画をパイプラインに反映する

調整ゾーン

あまり触れませんでしたがサイクルレビュー内で、クォーターレビュー・年レビューから調整ゾーンの見直しを習慣化しています。 その際に自分の人生の柱となるものは何なのか、それらをより良くする要素は何か? 逆に悪くなる要素はないか? などを検討してパイプラインを調整してます。

まとめ

細かいことは紹介しきれませんでしたが、重要なのは、単純な構造に落としてそれぞれを協調させるようにすると、それぞれが持つ情報を活かしやすくなるということだと思います。 みなさんも、ナレッジやタスク管理について悩んだ際には、それぞれをシンプルな構成に落して考えてみると良いかもしれません。 また、そのシステムがどういうシステムで動作するのかも検討してみるよ良いかもしれません。 私もまだまだNotionで全てを管理することはできていませんが、みなさんも是非、自分なりの管理システムを構築してみてください。